パブリックパーティー(公益党)
日本の行財政シリーズ

gyo-zaisei series

パブリックパーティー(公益党)は、令和3年6月7日、日本公益党として設立、
同年10月1日、党名を変更しました。

今も根強く残る官尊民卑の「士農工商」社会から脱却し、

公民(主権者たる国民/納税者)の自立と官僚統治国家体制の破壊を通じて、
日本を自由で活力ある民主主義国家として再興していくことを党是としています。

日本の行財政シリーズ(全10回)は、
月刊誌「ZAITEN」に、2023年2月号から11月号まで寄稿しました。
このページでは、その内容を掲載しています。

※パブリックパーティー(公益党)及びその政策は以下のリンクをご参照ください。
  パブリックパーティー(公益党)のリンク     ⇒ パブリックパーティー(公益党)
  パブリックパーティー(公益党)の政策のリンク⇒ 公益党の基本政策と10の提案
日本の社会保障① /年金
1
【国民年金・厚生年金の保険料】
国民年金の保険料は現在月額16,590円(令和4年度)となっています。また、会社員・公務員等が加入する厚生年金の保険料は、各等級の標準報酬に対する保険料は18.300%、事業主(会社・国・地方自治体等)と被保険者(会社員・公務員等)が折半して負担する仕組みです。
【少子高齢化の進展、高度成長期の終焉等が及ぼした影響】
高齢者(65歳以上)1人を支える現役世代(15歳~64歳)の数は、1960年の11.2人から2022年の2.06人となり、2040年には1.4人と見込まれています。人口構造の急激な変化は賦課方式の公的年金制度の根幹を揺るがす大問題であり、本来、これを認識した時点(遅くとも1980年代)において、公的年金制度は抜本的に見直すべきでした。
【公的年金の給付の実態】
厚生年金についての給付の実態を検証すると、標準報酬が30万円の場合、75歳迄(10年間)では総掛金は回収できず、標準報酬が50万円の場合、85歳迄(20年間)でも総掛金は回収できません。対症療法のみで制度の抜本的見直しを避けた結果、厚生年金は加入者のためにならない、特に標準報酬が高いほど持ち出しになり得る商品となっています。
【公的年金制度改革の方向性】
ズバリ! 公的年金制度は廃止するべきというのが私の結論です。
日本の社会保障② /雇用、こども・子育て支援
2
【雇用制度と労働市場】
日本の雇用制度は高度経済成長期に確立したいわゆる日本的雇用慣行によって特徴づけられ、新卒一括採用、終身雇用、年功賃金、企業別組合等の特徴があります。日本の労働市場はメンバーシップ型雇用(まず初めに人(社員)があり、それに仕事をあてがうという仕組み)で人材の流動性がなく、欧米型のジョブ型雇用(まず初めに仕事(ジョブ)があり、そこにふさわしい人をはめ込む仕組み)と対比されます。また、日本は、欧米に比べ、解雇規制が強いとの見方が一般的です。
【高度成長期の終焉、「失われた30年」が及ぼした影響】
雇用制度・慣行は、高度成長期の終焉、バブル崩壊と「失われた30年」を経ても基本的に維持されましたが、この間、賃金は全く上がらず、また、女性・高齢者雇用の拡大及び上記雇用制度・慣行の制約を受けない非正規雇用の拡大等、労働市場では大きな変化がありました。
【雇用制度・慣行に係る最近の動向、改革の方向性】
バブル崩壊後の就職氷河期世代は、その時代背景も大きく影響し、現在も多くの方々が貧困問題等の課題を抱えているとされます。この世代は「機会の平等」が得られなかった世代です。今こそ、こうした世代を初めとして、現在の仕事・生活・子育てや、将来の生活等に対する不安を一掃し、最低限の保証を全ての現役世代に対して行うことにより、安心して、仕事に、生活に、結婚に、子育てに、そして人生に積極的にチャレンジできる基盤を整備し、「失われた30年」を取り戻す時ではないでしょうか。
【日本の子ども・子育て支援】
日本は先進国の中でも真っ先に少子高齢化が進展している国であり、その持続的発展を維持する上でも少子化対策が必要なことは論を待たないところです。少子化の根源的な要因ともなっている就職氷河期世代を初めとする現役世代のセーフティーネットとして、また、児童手当制度等も統合する新たな給付制度として、「日本型ベーシックインカム制度」を導入すべきというのが私の結論です。
日本の社会保障③ /ベーシックインカム
3
【日本型ベーシックインカム(BI)制度】
「日本型ベーシックインカム(BI)制度」は、BIとしての給付と当該給付も含む世帯(家族)の所得に対する累進税率により、全世代に対応する持続可能な社会保障とシンプルで公平な税制を実現するものです。すなわち、理論的には「負の所得税を包含する給付付き税額控除制度」に依拠し、公的年金制度、雇用保険制度、生活保護制度や、児童手当制度等の給付制度を基本的に統合するものです。また、所得の捕捉ができていない日本の現状も踏まえ、事前給付型の制度として導入を進めますが、当該BI給付の一部は、簡素で透明、かつ、応能原則による公平な税制に基づき、確定申告に基づく事後的な納税によって回収することを予定するものです。具体的制度設計は次の通りです。
①0歳から22歳迄の全ての国民に対して月額50,000円を給付します。
②65歳以上の全ての国民に対して月額50,000円を給付します。
③23歳から64歳迄の全ての国民に対して月額25,000円を給付します。
④同時に、所得税の課税ベースを個人から世帯(家族)に改めます。
世帯の所得(上記①②③を含む)に対する税率については現在個人に適用されている累進税率(所得税;5%~45%。住民税;10%)を基本的に適用しますが、家族構成に応じたBI給付を踏まえ、基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除といった所得控除制度は全て廃止し、世帯単位で単純・公平、シンプルな税制、金融所得(利子、配当、株式譲渡所得等)を含む総合課税制度とします。

日本経済を停滞させた「失われた30年」の負の遺産となっている労働市場二極化・ワーキングプア問題を含む「伸びない賃金問題」や、少子高齢化等による社会保障支出増を背景とした「国民負担率急拡大問題」に対する政治不在・政策不在から脱却し、旧制度の抜本的な改革を通じて将来不安を一掃し、格差を是正し、日本経済を支える中間層を取戻し、未来に向けた国民生活の安定と日本経済の再興を進めます。
戦後77年変わらない古い制度・仕組みを抜本的に改革して財源を捻出します。

日本の社会保障④ /公的医療保険制度
4
【日本の公的医療保険制度】
日本の公的医療保険制度は国民健康保険法に基づく国民皆保険(1961年~)で、現在の制度は、自営業者等の「国民健康保険」、会社員・公務員の「被用者保険」、及び75歳以上の「後期高齢者医療制度」に分かれています。社会保険方式を基本とし皆保険維持のため公費(税金)を投入する仕組みです。国民の医療費の自己負担分は3割が基本、6歳(義務教育就学前)迄は2割、70歳~74歳は原則2割、75歳以上は原則1割となっています。我が国は、国民皆保険制度を通じて世界最高レベルの平均寿命と保健医療水準を実現できているとされます。
【公的医療保険制度改革のあり方】
私の提唱する医療保険制度改革は、日本型BI制度の導入も踏まえ、以下の通りです。
第一に、保険財政の観点からは、公的医療保険制度を将来的な人口ピラミッド構造の変化を踏まえても持続可能なものとするためには、現役世代のこれ以上の負担増を避ける観点も踏まえ、高齢者層の負担増は避けられません。具体的には次の制度改革を行うべきものと考えます。
①日本型BI制度によるセーフティーネット整備も踏まえ、全ての世代で医療費の自己負担割合を3割とします。
②地域医療との連携の観点も踏まえ、各保険者(市区町村)による適切な未納者対策を講じたうえで、国民健康保険制度に一本化します。
③日本型BI制度導入による所得税制改革とも平仄を取り、保険者(市区町村)が世帯(家族)所得をベースに保険料率を定めることとします。 
④現在の「高額療養費制度」は基本的に維持、各保険者(市区町村)が世帯所得に応じた医療費負担の上限額を設定し、超過した場合は当該超過額を被保険者に支給することとします。
第二に、保険制度の持続可能性維持のために医療費そのものを圧縮する観点から、医療制度そのものの効率化が必要です。供給側(医療制度)の構造改革、例えば、「かかりつけ医制度」の適切な制度設計や、コロナ禍での病床ひっ迫に象徴される医療提供体制の改革が必要です。
日本の社会保障⑤ /介護保険、まとめ
5
【日本の介護保険制度】
日本の介護保険制度は40歳以上の国民皆保険となっていて、公的医療保険制度同様、社会保険制度維持のため公費(税金)を投入、財源構成は、保険料収入が50%、公費(税金)が50%となっていて、公費(税金)50%の内訳は、国庫負担金(令和5年度介護関係予算3.7兆円)が25%(施設給付費は20%)、都道府県負担金が12.5%(施設給付費は17.5%)、市町村負担金が12.5%です。
保険者は市区町村、被保険者は65歳以上の第1号被保険者と40歳以上64歳以下の第2号被保険者から成ります。第1号被保険者の介護保険料は市区町村ごとに定められ、被保険者本人・その世帯員の市民税等の課税状況、被保険者本人の合計所得金額等により所得区分ごとに決定され、保険料は概ね3年毎に改定されます。第8期介護保険事業計画(2021-23年度)において全国平均で6014円(月額)となり、前期(2018-20年度)に比べて2.5%増加、制度創設時の第1期(2000-02年度)の2911円と比べて106.6%増加となっていて、高齢化に伴い保険料の上昇傾向が顕著です。第2号被保険者の保険料率は、公的医療保険制度の保険区分に対応し、医療保険料に上乗せする形で毎年定められ、自営業者等の国民健康保険加入者は市区町村ごと、会社員・公務員等の被用者保険加入者は労使折半の下で全国健康保険協会(協会けんぽ)、健康保険組合・共済組合ごとに決定され、いずれも、医療保険料と一体的に徴収する仕組みです。
【長期ビジョンを踏まえた社会保障制度改革議論の必要性】
今すぐ少子化対策に着手しそれが奏功し出生率が向上したとしても、その効果が将来社会に表れてくるのは、2040年代以降となります。その前に訪れる少子・超高齢化社会に対応するため、早急に、社会保障改革を進め、当面の20年を乗り切る必要があります。政府には、まず最初に、確定した未来である2045年頃(20年後)を見据えて、人口ピラミッド構造変化を踏まえた社会保障改革のあり方について、給付水準の見直し、財政や各世代の国民負担のあり方を含め、早急にビジョンを示すことを求めたいと思います。
日本の財政① /国家財政(一般会計)
6
【日本の財政(一般会計)の現状】
歳入歳出構造の変化を「失われた30年」の前後(平成2年度と令和5年度の当初予算の比較)でみてみましょう。

歳出で大幅に増えているのは、社会保障関係費と国債費です。前者は11.6兆円(17.5%)から36.9兆円(32.3%)へと25.3兆円増加と3倍以上に増加、後者は、14.3兆円から25.3兆円へと11.0兆円増加しています。この間、普通国債残高は166兆円から1,068兆円へと増加するのに対応して、利払費等は金利低下を反映して11.2兆円から8.5兆円に減少しています。
この間の歳出増加額48.1兆円は、高齢化による自然増が発生する社会保障関係費増加額25.3兆円と経済低迷等により税収が伸びない中での国債費増加額11.0兆円でその3/4は説明できます。残り1/4は、令和5年度新規事項の防衛関係費増加額1.4兆円と防衛力強化資金新規繰入れ3.4兆円、更に、令和3年度当初予算からの新型コロナ等の5兆円の予備費でほぼ説明できます。
歳入の方は、消費税は3%から5%、8%、10%と順次引き上げられ、消費税収は4.6兆円から23.4兆円へと18.8兆円増加するものの、所得税収は26.0兆円から21.0兆円へと5.0兆円減少、法人税収は18.4兆円から14.6兆円へと3.8兆円減少しています。

この結果、税収は60.1兆円から69.4兆円へと9.3兆円増加しますが、歳出増加の48.1兆円には大きく不足し、建設国債は5.6兆円から6.6兆円へと1.0兆円の増加、発行していなかった特例公債(赤字国債)を29.1兆円発行します。以上、この間の一般会計予算の推移を単純化して言うと、社会保障関係費増加額(25.3兆円)を特例公債発行額(29.1兆円)で賄ってきたということです。

 
また、例えば令和2年度から令和4年度迄の3年間で合計140兆円の補正予算を組んでいますが、補正予算の財源は基本的に公債金(特例公債と建設公債)ということになりますので、バブル崩壊後、新規の国債発行額が積みあがっていく過程では、景気対策の名目で繰り返し実施された補正予算による歳出増加の影響も極めて大きなものとなっています。

日本の財政② /国家財政(特別会計等)
7
【国家財政(一般会計及び特別会計)を概観】
令和5年度歳出予算の特別会計を含む全体像は総額253.6兆円です。社会保障関係費99.6兆円、国債費81.8兆円、地方交付税交付金等19.8兆円、財政投融資12.6兆円、その他39.8兆円等です。一般会計予算額と比較すると、一般会計社会保障関係費36.9兆円に対して+62.7兆円、同国債費25.3兆円に対して+56.5兆円、同地方交付税交付金等16.4兆円に対して+3.4兆円等です。
一般会計の歳入は租税及び印紙収入、その他収入(税外収入)、公債金、特別会計の歳入は各会計設置目的を踏まえ各会計ごとに決まります。
【社会保障関係費(年金特別会計等)を概観】
社会保障分野における特別会計を含む国の財政に加え、地方公共団体が運営する国民健康保険・後期高齢者医療制度に基づく健康保険事業等の保険給付・介護保険事業の保険給付や、これら事業の都道府県負担金・市町村負担金等、地方財政に係る給付や財源を足し合わせた国と地方を合わせた社会保険分野の財政をみると、令和4年度当初予算ベースで社会保障給付費131.1兆円(年金58.9兆円、医療40.8兆円、介護・福祉その他31.5兆円)、財源は、保険料74.1兆円、公費52.0兆円(国庫負担36.1兆円、地方税等負担16.0兆円)等です。
【国債費(国債整理基金特別会計)を概観】
令和5年度予算では、歳入として、一般会計より受入25.3兆円(60年償還ルールに基づく債務償還費16.8兆円、利払費等8.5兆円)、他特別会計より受入56.1兆円、公債金収入(借換債発行等)153.1兆円等、歳出として、国債整理支出234.8兆円(公債等償還224.7兆円、公債利子等支払10.0兆円)、(東日本大震災)復興債償還等のための復興債整理支出3.5兆円等が計上、今年度より、将来のカーボンプライシング導入によって得られる財源を裏付けとする「GX経済移行債」を発行し、民間のGX投資を促進する脱炭素成長型経済構造移行債整理支出1.1兆円等を計上しています。
【地方交付税交付金等(交付税及び譲与税配布金特別会計)を概観】
令和5年度予算では、歳入、すなわち、国からの支出は、国税の交付税対象税目の一定割合で基本的に決定される国の一般会計の歳出たる(入口ベースの)地方交付税16.4兆円と特別法人事業税等2.6兆円等から成り、歳出、すなわち、地方側の収入は、地方法人税1.9兆円や前年度繰越分1.4兆円等の財源調整後の(出口ベースの)地方交付税18.4兆円と地方譲与税2.6兆円等から成ります。
日本の財政③ /地方財政、財政投融資
8
【国と地方の財政の規模・内訳】
GDP(支出側)ベースで財政の規模をみると、令和3年度GDP550.5兆円の内訳は、民間部門が408.6兆円(74.2%)、公的部門が148.7兆円(27.0%)、うち、中央政府26.4兆円(GDPの4.8%/公的部門の17.8%)、地方政府64.5兆円(同11.7%/同43.3%)、社会保障基金(年金・医療・介護・労働等の保険事業等/国の年金特別会計・労働保険特別会計、地方の公営事業会計に属する国民健康保険事業会計・後期高齢者医療事業会計・介護保険事業会計等)50.6兆円(同9.2%/同34.1%)、公的企業(国の自動車安全特別会計、地方の公営事業会計に属する上下水道・病院・交通(バス・都市高速鉄道等)・宅地造成等)7.2兆円(同1.3%/同4.8%)です。すなわち、GDPの4分の1を公的部門が占め、うち、国と地方に事業主体が跨る社会保険事業等を除き、GDPベースでは、地方政府は中央政府の2.5倍の規模です。
【地方財政(地方財政計画)を概観】
地方財政について地方財政計画(通常収支分(東日本大震災分以外の分))に基づいてみてみます。歳入(歳出)総額は92.0兆円、内訳は、①地方税42.9兆円、②地方譲与税2.5兆円・③地方特例交付金等0.2兆円・④地方交付税18.4兆円(②③④は「交付税及び譲与税配布金特別会計」からの地方側の収入)、⑤地方債6.8兆円(うち、⑥臨時財政対策債1.0兆円)、⑦国庫支出金15.0兆円等です。
歳出の内訳は、給与関係経費19.9兆円、一般行政経費42.1兆円、公債費11.3兆円、投資的経費12.0兆円等となっています。
給与関係経費19.9兆円の内訳は、①国庫補助事業としての義務教育関係経費5.6兆円(小中学校教職員人件費)、②地方単独事業としての警察・消防・高等学校関係経費5.0兆円(地方警察官・消防職員・高校教職員人件費)、③同じく上記②以外の経費(児童福祉士・ケースワーカー・公立保育所保育士等の福祉関係職員のほか、一般行政職員・議員・各種委員等の人件費)9.3兆円です。なお、①②③には職員給(基本給+その他の手当)、地方公務員共済組合等負担金(職員の健康保険・厚生年金保険の負担金等)、退職金が含まれます。
一般行政経費42.1兆円の内訳は、①国庫補助事業としての生活保護、介護保険、後期高齢者医療、障害者自立支援等の関係経費(生活保護費負担金・児童手当等交付金・介護給付費負担金等の国庫支出金+地方負担金等)24.0兆円、②地方単独事業としての予防接種、乳幼児健診、ごみ処理、警察・消防の運営費、道路・河川・公園等の維持管理費、義務教育諸学校運営費、私学助成、戸籍・住民基本台帳等15.0兆円、③同じく国民健康保険・後期高齢者医療保険拠出金1.5兆円等です。
投資的経費12.0兆円の内訳は、国の直轄事業・国庫補助事業の公共事業等5.7兆円、地方単独事業の公共事業等6.3兆円です。
公債費11.3兆円は、地方債の元利償還金及び一時借入金利子の支払いに要する経費です。
公営企業拠出金2.4兆円は、水道、病院等の公営企業債の元利償還金等です。
以上、地方財政計画の歳出の大部分は、国庫補助事業・地方単独事業ともに、小中高教職員や警察官等の人件費や社会保障関係経費等、国の法令・制度等に基づく経費となっています。
【財政投融資(財政投融資特別会計)を概観】
令和5年度財政投融資計画では、財政融資については、財政融資資金12.7兆円を計上し、その資金調達に関しては財投債12.0兆円の発行を計画しています。同計画では、産業投資資金0.4兆円、政府保証3.1兆円を併せて計上しています。
日本の財政④ /総括①
9
【国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計】
国立社会保障・人口問題研究所の令和2(2020)年国勢調査の確定数を出発点とする「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によりますと、
①合計特殊出生率は、前回推計(平成29年推計)の1.44(2065年)から1.36(2070年)に低下し、また短期的には新型コロナ感染期における婚姻数減少等の影響を受けて低調に推移。2022年に80万人を下回った(77万人)出生数は2070年には50万人を下回り、
②平均寿命は、2020年の男性81.58年、女性87.72年が、2070年には男性85.89年、女性91.94年(死亡中位仮定)と前回推計(2065年に男性84.95年、女性91.35年)と比較してわずかに伸び、
③国際人口移動の外国人入国超過数は、前回推計の年間約6万9千人(2035年)から今回の約16万4千人(2040年)へ大きく伸びます。
その結果、50年後(2070年)の総人口は、令和2(2020)年国勢調査による1億2,615万人が2070年には8,700万人に減少(2020年時点の69.0%に減少)します。生産年齢(15歳-64歳)人口は、2020年の7,509万人から2070年には4,635万人に減少する一方、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は、2020年の28.6%から2070年には38.7%へと上昇します。
要約すると、50年後の姿は、現在と比べて総人口は3割減少。年齢階層別にみると、高齢者層は人口規模を概ね維持し、高齢化率は3割程度から4割程度へと上昇。現役世代(生産年齢人口)は4割程度減少し、総人口の5割強までその占率は縮小。また、日本人人口は4割近く減少。外国人人口が3.5倍に増加し、外国人の占率は総人口の1割超といった姿が見えてきます。
【論点①とその改革の方向性】
日本が少子・超高齢化社会を迎える中、GDP2倍超の政府債務は持続可能でしょうか。財政赤字への処方箋はどのようなものでしょうか。
令和5年6月末の政府債務(国債及び借入金現在高/普通国債の他、財投債、政府短期証券等も含むもの)は1276.3兆円とGDPの2倍を裕に超え、世界的にも突出した規模となっています。バブル崩壊後の「失われた30年」が進行する中で、税収が伸びない一方、高齢化に伴う社会保障関係費の激増(3倍超)や、景気対策の名目で繰り返し実施された補正予算による歳出増等を通じて、財政赤字は年々拡大、政府債務はGDP成長率を大きく上回るペースで増加しました。国の長期債務残高は、6月末実績で1053.2兆円、令和5年度末見込みで1097兆円、国及び地方の長期債務残高は令和5年度末見込みで1280兆円となっています。なお、政府債務累増の背景として、平成25年から10年間に及ぶ「異次元金融緩和」による国債発行金利のゼロ近傍への低下で、財政規律が更に緩んだ影響も指摘されます。

「少子・超高齢化社会」を迎える中、こうした状況を続けていけるのでしょうか。
答えは、明らかに「否」です。上述の人口推計では、2020年には、高齢者1人を現役世代2.1人で支えていたものが、2070年には、同じく1.3人で支えることとなります。現在よりも更に経済の担い手の割合が減少する将来社会に向け、これ以上、借金のつけを将来世代に担わせることは決して許されません。人口が3割減少すれば、同じつけ(同じ政府債務)でも国民一人当たりではつけは3割以上の増加、これを現役世代の人数でみれば、現役世代が4割減少すれば、同じつけでも現役世代一人当たりではつけは4割以上の増加となります。
今を生きる我々世代が必要な財源は担う覚悟が必要です。この寄稿でも度々指摘している通り、真の全世代型社会保障の観点から、現役世代が高齢者世代を支えるという発想ではなく、支えることができる人が、年齢に関係なく、支えを必要とする人を支えていくという思想への転換も必要です。社会保障を少子・超高齢化社会でも持続可能な様に再設計することは財政健全化の観点からも必須です。

政府債務を減らすためには財政の黒字化が必要ということになりますが、現在、政府の財政健全化目標は「骨太方針2018」で掲げた「2025年度の国・地方を合わせたプライマリー・バランス(PB)黒字化」となっています。これは、国と地方の政策的経費(歳出から国債等の利払費を引いたもの)の黒字化を目標とするもので、(金利が名目GDP成長率と同じと想定し、)国・地方の債務残高の対GDP比率をこれ以上悪化させない水準を財政健全化目標としているものです。
元より、財政健全化には経済成長による税収増が何より必要です。「失われた30年」を通じた労働市場二極化・ワーキングプア問題を含む「伸びない賃金問題」の下での「国民負担率急拡大問題」(1996年度➩2021年度の国民負担率(社会保障負担)35.2(12.3)%➩48.1(19.3%)%/財務省)は国民の消費支出の抑制等を通じてGDP成長率を下押しし、中長期的観点からは全く政策効果が無かった補正予算による経済対策と相俟い、現下の財政悪化を招いた元凶となっています。

日本の財政⑤ /総括②
10
【論点②とその改革の方向性】
日本の公的支出の領域は今のままでいいのでしょうか。中央政府の他、地方政府の公営事業、普通会計に属する領域を含め、民間へ移行すべき領域はどこなのでしょうか。
日本は、明治維新によって中央集権国家体制を構築し、富国強兵と殖産興業により急速な近代化を進めて欧米列強と渡り合い、結果、終戦を迎えましたが、戦後のGHQによる民主化等の改革を経ても、戦後復興から高度経済成長、バブル崩壊を経て現在に至るまで、中央集権型官僚統治国家体制は基本的に維持されました。すなわち、縦割りの各省庁が創る法律・政省令・通達等による様々な規制やいわゆる行政指導によって、民間の自律的な事業の実施が妨害され、民間が監督官庁の意向に常に配慮する官僚機構依存型の経済社会構造となり、民間の創意工夫によるイノベーションが生まれにくい社会となり、成長力を大きく減退させています。また、行政府が増殖・肥大化し、行政府によって立法府・司法府が浸食されています。法案のほとんどは縦割りの各省庁により国会に提出され、行政裁判は行政によって仕切られています。
社会保障については、将来ビジョンを踏まえた年金、医療、介護、こども・子育て等の制度の抜本的改革が必要です。国と地方を合わせた財政の中で突出した規模を有し、少子高齢化で給付費が急拡大している社会保障分野において、将来推計人口等に基づき、財政の持続可能性を検証する観点も踏まえ、負担と給付の将来像を提示することが急務です。現役世代が高齢者世代を支えるのではなく、支えることができる人が、年齢に関係なく、支えを必要とする人を支えるという思想への転換とこれに基づく負担と給付の再設計が不可欠です。
国や地方公共団体の行政事務や事業は、原点に戻って、その現在的意義、すなわち、現在において、これら行政事務等が公益上どのような社会的意義があるかの検証、そして、今のまま行政事務等を継続すべきかどうか、また、継続するとしても国や地方公共団体がその行政事務等を行う必要があるか、中長期的な視点に立って、一つひとつ検証し、それぞれの行政事務・事業のあり方を検討し直していく必要があります。医療、福祉・介護、子育て、教育、…、全ての行政分野・事業領域です。

【論点③とその改革の方向性】
国と地方の役割分担は今のままでいいのでしょうか。地方へ移管すべき領域はどこなのでしょうか。道州制の導入等を含め、統治機構を抜本的に見直す必要はないでしょうか。
日本は、明治維新によって中央集権国家体制を構築し、内務省が派遣する官選知事、同じく内務省の下で選任される市町村長が地方行政を担いましたが、戦後のGHQによる地方自治導入を経て、内務省は解体され、公選の知事・市町村長が誕生しました。しかし、戦後復興から高度経済成長期を経て、中央集権官僚統治国家体制の下での縦割りの法律・税財政制度に基づく国の地方支配はむしろ強化され、縦割りの事業官庁による補助金と復活した総務省(旧自治省)による地方交付税の差配を通じた地方行財政への介入は今も根強く残ります。
日本の長期低迷を招いた官僚機構に依存する経済社会構造を根本的に変革、「既得権益」を徹底的に排するため、国が担う役割を安保、外交等に限定し、内政は基本的に地方政府に委ね、法令に基づく行政権限を大幅に縮減した上で残る権限を地方に委譲すべきでないでしょうか。
この際、道州制の導入を進めるべきではないでしょうか。具体的には、国の行政の役割を外交・防衛・安保、危機管理、経済財政政策、通貨・金融システム等の制度化と監視、通商・移民政策、年金・医療保険等の国民基盤サービスの設計等に限定し、広範な自治立法権に基づき、制度設計を含めて一元的・総合的に取り組む地方政府を全国7~9程度の道州(北海道を含む)として創設し、道州と基礎自治体との適切な役割分担のもと、地方に行政権限及び財源を委譲することを通じて地方の自立を進めます。中央集権・東京一極集中から地方が自立した分権型・多極型社会を形成するため、自治立法権・自治行政権・自主税財源基盤を持つ地方政府を創設し、河川、道路、橋、通信基盤、空港整備・維持、生活環境整備、旧国有林野事業、公害対策、災害復旧、危機管理、能力開発、職業安定、雇用対策等を自立的に担う道州を創設するものです。同時に、徴税業務は地方政府に移管し、地方交付税は廃止、そして、複雑で雁字搦めの税財政体系を透明で簡素な税制に改め、地方の自主財源を整備します。

お問い合わせ
contact

営業時間
9:00~17:00
〒102-0083
東京都千代田区麹町1-3 ダイアン麹町ビル3F
パブリックパーティー(公益党)