日本経済を停滞させた「失われた30年」の負の遺産となっている労働市場二極化・ワーキングプア問題を含む「伸びない賃金問題」や、少子高齢化等による社会保障支出増を背景とした「国民負担率急拡大問題」に対する政治不在・政策不在から脱却し、旧制度の抜本的な改革を通じて将来不安を一掃し、格差を是正し、日本経済を支える中間層を取戻し、未来に向けた国民生活の安定と日本経済の再興を進めます。
戦後77年変わらない古い制度・仕組みを抜本的に改革して財源を捻出します。
また、例えば令和2年度から令和4年度迄の3年間で合計140兆円の補正予算を組んでいますが、補正予算の財源は基本的に公債金(特例公債と建設公債)ということになりますので、バブル崩壊後、新規の国債発行額が積みあがっていく過程では、景気対策の名目で繰り返し実施された補正予算による歳出増加の影響も極めて大きなものとなっています。
「少子・超高齢化社会」を迎える中、こうした状況を続けていけるのでしょうか。
答えは、明らかに「否」です。上述の人口推計では、2020年には、高齢者1人を現役世代2.1人で支えていたものが、2070年には、同じく1.3人で支えることとなります。現在よりも更に経済の担い手の割合が減少する将来社会に向け、これ以上、借金のつけを将来世代に担わせることは決して許されません。人口が3割減少すれば、同じつけ(同じ政府債務)でも国民一人当たりではつけは3割以上の増加、これを現役世代の人数でみれば、現役世代が4割減少すれば、同じつけでも現役世代一人当たりではつけは4割以上の増加となります。
今を生きる我々世代が必要な財源は担う覚悟が必要です。この寄稿でも度々指摘している通り、真の全世代型社会保障の観点から、現役世代が高齢者世代を支えるという発想ではなく、支えることができる人が、年齢に関係なく、支えを必要とする人を支えていくという思想への転換も必要です。社会保障を少子・超高齢化社会でも持続可能な様に再設計することは財政健全化の観点からも必須です。
政府債務を減らすためには財政の黒字化が必要ということになりますが、現在、政府の財政健全化目標は「骨太方針2018」で掲げた「2025年度の国・地方を合わせたプライマリー・バランス(PB)黒字化」となっています。これは、国と地方の政策的経費(歳出から国債等の利払費を引いたもの)の黒字化を目標とするもので、(金利が名目GDP成長率と同じと想定し、)国・地方の債務残高の対GDP比率をこれ以上悪化させない水準を財政健全化目標としているものです。
元より、財政健全化には経済成長による税収増が何より必要です。「失われた30年」を通じた労働市場二極化・ワーキングプア問題を含む「伸びない賃金問題」の下での「国民負担率急拡大問題」(1996年度➩2021年度の国民負担率(社会保障負担)35.2(12.3)%➩48.1(19.3%)%/財務省)は国民の消費支出の抑制等を通じてGDP成長率を下押しし、中長期的観点からは全く政策効果が無かった補正予算による経済対策と相俟い、現下の財政悪化を招いた元凶となっています。
【論点③とその改革の方向性】
国と地方の役割分担は今のままでいいのでしょうか。地方へ移管すべき領域はどこなのでしょうか。道州制の導入等を含め、統治機構を抜本的に見直す必要はないでしょうか。
日本は、明治維新によって中央集権国家体制を構築し、内務省が派遣する官選知事、同じく内務省の下で選任される市町村長が地方行政を担いましたが、戦後のGHQによる地方自治導入を経て、内務省は解体され、公選の知事・市町村長が誕生しました。しかし、戦後復興から高度経済成長期を経て、中央集権官僚統治国家体制の下での縦割りの法律・税財政制度に基づく国の地方支配はむしろ強化され、縦割りの事業官庁による補助金と復活した総務省(旧自治省)による地方交付税の差配を通じた地方行財政への介入は今も根強く残ります。
日本の長期低迷を招いた官僚機構に依存する経済社会構造を根本的に変革、「既得権益」を徹底的に排するため、国が担う役割を安保、外交等に限定し、内政は基本的に地方政府に委ね、法令に基づく行政権限を大幅に縮減した上で残る権限を地方に委譲すべきでないでしょうか。
この際、道州制の導入を進めるべきではないでしょうか。具体的には、国の行政の役割を外交・防衛・安保、危機管理、経済財政政策、通貨・金融システム等の制度化と監視、通商・移民政策、年金・医療保険等の国民基盤サービスの設計等に限定し、広範な自治立法権に基づき、制度設計を含めて一元的・総合的に取り組む地方政府を全国7~9程度の道州(北海道を含む)として創設し、道州と基礎自治体との適切な役割分担のもと、地方に行政権限及び財源を委譲することを通じて地方の自立を進めます。中央集権・東京一極集中から地方が自立した分権型・多極型社会を形成するため、自治立法権・自治行政権・自主税財源基盤を持つ地方政府を創設し、河川、道路、橋、通信基盤、空港整備・維持、生活環境整備、旧国有林野事業、公害対策、災害復旧、危機管理、能力開発、職業安定、雇用対策等を自立的に担う道州を創設するものです。同時に、徴税業務は地方政府に移管し、地方交付税は廃止、そして、複雑で雁字搦めの税財政体系を透明で簡素な税制に改め、地方の自主財源を整備します。